SLS-AMG 試乗体験記


久しぶりにスポーツカーに乗ってきました。
今回はAMGフェアーということで、YanaseでC63-AMGと、SLS-AMGに乗ってきました。
高速道路をメインとした試乗で、一般道も少し走りました。
ワインディングやサーキットを走った訳ではないので、コーナリングの限界性能については分かりません。
また、C63AMGと比較しながらのインプレッションになります。

スペック
FR, V8 6208cc 571ps, 7AT
4640x1950x1265mm, 1710kg
\24,300,000
・・・わくわくしますね。

エクステリア



ご覧の通り、ガルウィングです。
剛性を出すためにサイドシルが相当分厚く作られており、
乗り降りはかなり困難です。
外装の仕上げは価格なりのものですが、
プラスチックのメッキパーツが多用してあり、
安っぽいと捉えることも出来ます。



ドアはここのハンドルを引き上げてあけます。
一方、座りながらドアを閉めるのはかなり困難で、
相当手をのばさなければドアを閉められません。



ガルウィングは相当高くあがり、しかも横向きにも開くため、駐車場を相当選ぶことに気づきました。
下手なところにとめると、出られないという恥ずかしい自体に陥ります。
立体駐車場やタワーパーキングにはまず駐められないでしょう。
かなり行く場所を選ぶクルマ、ということになり、趣味性ははるかに高く、
SL63あたりよりも趣味的になります。まだ、フェラーリの方が日常的です。
僕がSLS-AMGを買ったら、面倒になってしまって、半年に一回しか乗らないこと確実です。
これはクルマを相当集めている人向けかも知れません。

インテリア
アルカンターラで内装はほとんど覆われています。シートはかための革シートでホールドは正直いまいち。
オプションではインテリアはカーボンパーツになりますが、純正ではプラスチックのアルミメッキ調です。
僕にはどうもこのプラスチックメッキが、2000万円の車にはふさわしくないように思いました。
かといって、ポルシェやフェラーリの内装が特別素晴らしい訳でもないのですが。
内装の品質だけなら、AudiR8あたりの方が上質かも知れません。



メーター周りですが、フルスケール360kmのメーターで威嚇してくれます。
メーター自体もやはりアルミ調で、決して高級感にあふれていた訳ではありません。
Sクラスの液晶メーターの方がまだ格好良いように思いますが、どうなんでしょう。

ちなみに、スイッチ周りなどは、Cクラスとほぼ同じ配置になっており、
メルセデスにのったことがあるかたならば、特に違和感なく操作できるようになっています。
ここは非常に良い点と思います。下手にスポーツをアピールしてないところは好感が持てます。

というわけで、止まっている状態では、ガルウィングのインパクトはあるものの、
内外装では特に強烈なオーラがあるクルマではありませんでした。

動力性能・走り・足回り
エンジンはAMGの6300ccモデルのうち、E63AMGなどと同じ570馬力モデルです。
C63AMGと乗り比べると、確かに457馬力とは一線を画してパワー感があると感じます。

シフトは7速ATですが、DCTスピードシフトといい、デュアルクラッチのようです。
さすがにシフトスピードは速く、パドル操作をしても、全く違和感はありません。
低速域では、マナーは意外に良く、よくある渋滞時の2ペダルのぎくしゃく感はありません。
レッドゾーンは7000rpm+αですが、実際のパドルは、7000rpm回転以上のシフトを受入れません。

0-100km加速をしてみると、非常にこのクルマのトラクションが良いことに驚きます。
C63MAGでは1速フル加速ではいきなりトラクションコントロールが介入しますが、
SLS-AMGではリヤタイヤががっちりと食いついて、TCSが介入せず加速してくれます。
1速、2速、3速とどんどん速度が乗っていき、さすがに570馬力だなぁ、という感じはします。
速度的には、カレラS、GT-R、IS-Fあたりとは良い勝負か若干勝ちという到達速度です。
570馬力といっても、視界が歪むこともありませんし、十分制御できる範囲内です。
570馬力が普通に乗れるということはある意味すごいことだと思います。
電子制御のおかげも大きいと思いますが、どんな人が570馬力を乗っても、それなりに
運転出来てしまうという。特にホイールスピンするわけでも、どっかに飛んでいく訳でもないわけで。
しかも、万が一ぶつかってもそれなりに安全も確保されているという。
一昔前の改造車と、メーカーの作るスーパースポーツとはかなり違うなぁ、という印象です。

ただ、ガヤルドLP560-4(560馬力、1500kg)と比べてしまうと、少し加速感にパンチが無い感じはしました。
ガヤルドはSLSより200kgも軽く4駆で、より路面にタイヤが食いついて暴力的に速度が乗っていく感じがします。
しかし、FRということを考えると、SLSのトラクションの良さは特筆すべきと思います。
少なくとも僕が今までに乗ったFRの中では、かなり加速の鋭いクルマと思いました。



SLS-AMGはFRですが、実際のエンジンは限り無くフロントミッドシップに近い搭載位置になっています。
トラクションの良さはこういったところもあるのかも知れません。



ちなみに、タイヤはContinental(詳細不明、専用モデル?)で、フロント19インチ、リヤ20インチです。
グリップ性能はかなり高いタイヤのように思いました。
足回りはかなり固めで、どこぞのいじったチューニングカーのローダウン車高調と良い勝負です。
高速のつなぎ目でボンボン跳ねていましたので、それほど路面追従性が高いわけではありませんが、
とにかく、トラクションはよくかかる足です。

ボディ剛性は残念ながら決して高くありません。
加減速や車線変更のときに、ボディへのちょっとした入力でキシミ音がでることがしばしばありました。
ドアの開口部が非常に大きいことがマイナスに働いているのかも知れません。

ブレーキはさすがに大きなキャリパーと、ハイグリップタイヤのおかげで、よく効きます。
コントロール性も悪くありませんし、おそらくサーキットでもそれなりにいけるのではないでしょうか。
制動距離も短く、市販車として非常に良いブレーキと思いました。

コーナリングですが、6300ccエンジンを積んでいるだけあって、さすがに鼻先の重さを感じます。
ハンドルを切っても、曲がりはじめるまでの応答には少しタイムラグがある感じです。
限界性能は分かりませんが、少なくともクイックではなく、むしろ高速を真っ直ぐ走る方が、
適しているように思いました。クイックだけなら、IS-FやGT-Rの方が全然クイックです。
まあ、C63AMGよりはSLSの方が一応クイックでしたが。
ここら辺はベンツという感じが前面に出ているようにも思います。

ちなみに、マフラー音は終始大きめで(チューニングカーの爆音ほどではありませんが)、
アイドリングから大きなエンジン音が室内に入ってきます。
室内がせまめで、シートもタイトであることから、かなりの閉塞感を伴います。
ここら辺、SLクラスが安楽志向なのとは対極にあると言えます。

ユーティリティ



2シーターで、シートの裏のスペースはほとんど使えない上に、小物入れもほとんどありません。
トランクは小さなスーツケースがかろうじて入る程度。SLクラスで屋根をあけたときといい勝負でしょう。
SLS-AMGで二人乗車での旅行は荷物をかなり制限する必要があります。

ここまで書いてきて思ったのですが、SLS-AMGはどういう人が、どういう時にのるクルマなのでしょうか?
僕は、正直、今回の試乗でそれが分かりませんでした。

ユーティリティだけでは911よりも悪く、走行性能では458イタリアよりも悪く、
加速感ではガヤルドよりも悪く、そして、SLSのガルウィングの弊害はかなりのものです。
駐車場は限られますし、乗り降りはかなり大変です。女性には受けが悪いのは確実です。
しかも、ベンツブランドの売りである安楽志向でいえば、SL63,SL65と、
安楽で早いオープンカーが色々既に用意されています。

一方、SLS-AMGがサーキットを走る姿はどうしても想像が出来ません。
また、1710kgという車重ももう少しシェイプアップ出来たように思います。
高速を長時間クルーズするには、快適性が低すぎますし、
限界性能を追求すれば、ガルウィングによる剛性の低下や、
ホイールベースの長さ、鼻先の重さといったネガが出てくるかも知れません。

ここで、仮想ライバルを並べてみると、
911turbo 2090万円 1570kg 500ps 4WD
R8 5.2 1994万円 1690kg 525ps 4WD
ガヤルド2428万円 1500kg 560ps 4WD
フェラーリカリフォルニア 2360万円 1860kg 460ps FR
フェラーリ458 2830万円 1380kg 570ps FR
GT-R specV 1575万円 1670kg 530ps 4WD
IS-F 790万円 1690kg 423ps FR
LFA 3750万円 1580kg 560ps FR

SLS-AMG 2430万円 1710kg, 571ps, FR
SL63 1939万円 1990kg 525ps, FR
SL65 2964万円 2020kg, 612ps, FR

と、いった感じです。(LFA高いなぁ・・・)
ちょっと、SLS-AMGの立ち位置が微妙だなあ、という感じがしてきますね。
2500万円も非実用のクルマにつぎ込める人は、何を求めているのでしょうか?
走りの楽しさ?威張れる事?目立てる事?
僕には良く分かりません。まぁ、こんなクルマが買える身分になったら、
またゆっくり考えることにしましょう!

おそらくこの手のクルマが平気で買える人には、AMGが作ったスポーツカーというのは
ある意味信頼性もあり、魅力的でもあるのかも知れません。
でも、その場合は、SLを買うのが普通の人かな?
しかし、こんなクルマがディーラーに並ぶこと自体はすごいことですねー。
ベンツもAMGは過激です。

 


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