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公衆衛生学シケプリ

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公衆衛生学の試験は例年前年度の追々試の問題とそっくりのものが出るということです。それにのっとって、平成8年度から平成9年度の追追試までの分について解答を作ってみました。

過去シケプリを持っている人は、「なーんか似てるな?」なんて思ったりもするでしょうが、授業にも出ていない16班の面々がえっちらおっちら作ったものです。まぁないよりはましでしょう。

 もっといっぱい勉強したい人は、1) 論文と教科書をまじめに読む、2) 来年公衆衛生の授業にちゃんと出る、3)シラバスを読みキーワードを理解する、4) 公衆衛生のアプローチを解く、といった対策が考えられますが、1)4)をちゃんとやった人を知らないので統計学的に有意な差が出るかどうかは分かりません。でも試験の役に立つのは3)1)で、4)は時期尚早でしょう。

 試験は44()13時から大講堂で行われるということですが、くれぐれもすっぽかさぬように。(そのあとで卒後研修委員会から大事なお知らせがあったりするので。)

 

平成9年度追々試試験問題

T. 以下について詳述しなさい(それぞれ臨床実習要項ですでに指定した文献要約の内容にしたがうこと。)

1) Critical reading of medical literature

2) Basic methods of epidemiological study

3) How to carry out a study

4) Fallacies in numerical reasoning

 

U. 以下について知ることを記しなさい。

1) 日本国憲法、厚生省の設立、及び大学の公衆衛生学教室の開設間の関係

2) ヒポクラテス、ラマツィーニ、レッグの格言、及び日本の労働安全衛生法の共通テーマと個別テーマ

3) Factory Act vs Public Health ActT. サックラー vs E. チャドウィック

4) 鉛中毒の臨床像と非顕性の健康影響(subclinical health effects of lead

5) 神経生理学的方法、神経行動テストバッテリー、産業/環境神経行動学間の関係

6) 生活習慣病、行動科学、行動医学間の関係

7) 作業関連疾患とTHP活動

8) Confounding factor(交絡因子)の重要性

9) Signed rank test vs Paired t-test

10) 地域保健の新しい動向

11) 地域医療の新しい動向

12) 国際保健の主要テーマ

13) 老人保健法の内容

14) 環境保健の主要トピックス

15) わが国の健康政策の変遷

 

 

T.以下について詳しく述べなさい。

(1) Critical reading of medical literature  担当:三村

(解答)

医学論文を読むに当たって以下の手順に従って読む。

  1. 目的・仮説

  1. この研究の目的は何か、検討課題は何か。
  2. 研究者は得られた結論をどのような集団に適用しようと考えているのか。

  1. 研究のデザイン

  1. この研究は実験なのか、計画された観察なのか、それとも記録の解析なのか。
  2. 標本はどのように抽出されたのか、抽出方法が偏っているために標本集団が母集母集団をうまく代表しているのか。またそのようになっていない場合、その偏りを補正する方法はどのようになっているのであろうか。
  3. コントロール群・標準対照群の性状はどうであるか。

  1. 観察

  1. 診断基準、測定、結果評価基準において用語の定義は明白になされているか。
  2. 分類方法や測定方法は全対象に関して条件は同じであるか。またそれらは研究目的と関連があるか。測定方法に偏りがないか、もしあれば、どのように補正しているのか。
  3. 観察結果は信頼性があるか。また再現性があるか。

  1. 観察結果の提示

  1. 結果は明瞭かつ客観的に提示され、読み手がそれを自分で判断するための十分な材料も併せて提示さているか。
  2. 結果の食い違いがないか。たとえば合計は正しいか、あるいは別々の表を比較しても一貫しているか。

  1. 分析

  1. 得られたデータは統計分析を行うだけの価値があるか。その場合、分析方法はデータに対して適切であるか。
  2. 統計的に有意な差がでたとき、性別、年齢分布、臨床的性質等のために対象が比較できなくなっていないかどうか。あるいは十分分析がされているか。

  1. 結論
  2.  観察結果によって結論は十分説明されるか。説明されない結果はないか。研究者が最初にたてた疑問と結論には関連があるか。

  3. 建設的意見

 自分が研究の検討課題を与えられたとし、それに答えるために計画を練るとする。実際の論文で検討課題が明確に提示されていない場合には、自分でそれを組立てみる。実行可能な研究デザインを考え、観察基準を決め、どのような分析手法を用いれぱ信頼でき、意味もあり、検討課題に即した情報が得られるかを考える。

 

(2) Basic methods of epidemiological study 担当:児玉

(解答)

1.Relashionships

疫学研究ではなんらかの変数を決定し、2つあるいはそれ以上の変数の間の関係を考える。1つをindependent variable、他の変数を dependent variableという。

2.observational versus Experimental studies

疫学研究にはobservational study experimental studyがある。前者は自然の経過を観察することにより2つ以上の関係を研究するものであり、後者は研究者が能動的に介入して変数に差をつけ、その結果がどうなるかをみるものである。この場合、研究対象以外の変数が結果に影響を与えないようにする。

3.Descriptive versus Analytic Studies

observationalな疫学には2つの目的がある。1つは疫病とそれに関連する出来事を記述することであり、もう1つは疫病の発生パターンを説明することである。

Describe studyでは、疫病の発生率などがある特定のグループの中でどれだけあるかが記述され、Analytic Studyでは疫病の発生パターンなどが説明される。

4.Cross-sectional Studies (prevalence Studies)

これはある特定の時点で、疫病と他の因子がどのように関連するかを調べるものである。調べ方には、

(1)ある因子があるかないかでグループを分け、その罹患率をみる。

(2)罹患しているしていないでグループを分け、そこでの因子の違いを見る。

という2通りがある。

5.Case-Control Studies

これはCross-sectional Studiesと似て居るが、ある事柄を考える際に、その疾患をもたない群を対象群として擁立し、ある因子がどのくらいの頻度で両者に関係しているかを比較対照するものである。

6.Cohort studies (Incidence Studies)

ある時点で疾患をもたない群で、調べたい因子をCohortとしてその群を追跡調査する。そしてCohortとして設定した因子を調査開始段階で持っていたか持っていなかったかで人口を分類し、その当該疾患の罹患率を調べる。

7. Prospective and Retrospective Studies

Prospective Retrospectiveという言葉は二つの意味で使われる。一つは研究の開始時点と比較して調査対象が過去のものか未来のものかということであり、もう一つは、観察の方向性が過去へ向かうものなのか未来へ向かうものなのかという意味で使われる。ただし、後者の意味は現在では用いられない。Prospective studyCohort studyのことであり、研究対象をどのように研究するか、計画を立てコントロールすることができる。一方Retrospective studyCase-Control studyを意味し、それぞれ異なった基準で記録された可能性のある過去のデ―タ分析するのであるから、データが不十分なこともありうる。

 

(3)How to Carry Out a Study  研究の進め方 初心者向けの一般的手引き 担当:西村

(1)Defining the Problem 問題を明確に

 明確、単純、回答可能な問題設定する。漠然とした広範な問題設定は非現実的であり、単純な問題への注意深い研究の積み重ねこそが医学を進歩させる。量的な問題設定はより好ましい。

(2)Reviewing the Relevant Literature 関連文献を調べる

 関連文献を調べることにより、何が既に分かっているのか、他の研究者が直面している問題が分かる。誤った偽の関連性を結論づけることを避けることにもなる。

 関連文献を調べると、多くの場合は、問題についていかに分かっていることが少ないかを実感するだろう。また、信頼すべき教科書的な記述・定説の根拠が貧弱であることも多く、より詳しく研究することが求められているとも言える。

(3)Preparing a Protocol実験計画を用意

実験計画を書き記す利点は下の通り。

1.問題がより明確になり、ずれや欠点が見えてくる

2.他者に見せることができる

3.永久に残る記録が、計画の忘却や無意識の変更を防ぐ

書き記すことを嫌う人は研究をあきらめるしかない。

(4) Contents of the Protocol実験計画の内容

欠かすことのできない要素として以下をあげる。

1.問題と目的

2.研究の背景と意義 なぜ研究が必要か

3.方法  疾患の診断基準、データの数・解析法も含めて

4.おおよそのタイムスケジュール

5.予算  必要な人員と経費

(5)Consultation相談

 専門家に相談して、潜在する問題や困難を明らかにする。専門家からは多くの援助(アドバイスetc)が得られる。

(6) Presenting the Study Plan to Other Key Individuals

  研究計画の、重要な他者への提示

 研究者は責任者に実験計画を提示し、承認を得なければならない。同時に、協力(アドバイス、臨床症例の提供、他の進行中の研究の情報etc)を得ることができる。

(7)Data-Collection Methodsデータの収集法

 データの収集に当たっては、極端に大きな値や、未調査などすべての可能性を網羅するフォームを作ることが必要である。フォームとして選択式のものは、記入する手間を省き間違いを減らすのに有効である。ただし、選択肢を広範囲にし過ぎるのは重要な区別が失われたり、後で解析の際に情報が不足したりするので好ましくない。量的データは後で平均や偏差を求めたり、break pointを定める上でも、質的データにせずそのまま書き写すほうが良い。

(8)Pre-testing of Data Collectionデータ収集のテスト

 問題を洗い出すために、身近な人でデータ収集をテストしてみることが大切。カルテを用いる場合でも、例えば血圧として誰がいつ計った値を採用するかなど、データの詳しい取り方を明確にする必要があり、やはりテストは必要である。テストにより明確にデータ収集フォームが定まり、実験開始後のトラブルを事前に回避できる。

(9)Data Collectionデータ収集

 データを収集・記録するときに、人を使うときには、研究者が監督する必要がある。特に、実験計画が忠実に行われているか、行われていないとすればどれぐらいの間違いの頻度か、を把握する。また、新たに生じた問題点については、実験計画の変更は最小にとどめ、変更点は研究計画に付け加えておく。

(10)Data Editingデータの編集

 間違いや脱落は避けられないので、コンピュータに入力する前には人手で、入力後にはコンピュータで脱落・極端な外れ値・矛盾をチェックする。最終的にはこれらをどう扱うかは研究者が決める。

(11)Data Analysisデータの解析

 解析には、データのカテゴリー化、計数、頻度・比率・平均・偏差etcの算出が含まれる。初心者はデータ解析用に、最初に空欄を含む表を作るべきである。その表は、年齢・性別etcによって分けられていて、頻度・平均・偏差を求めるときにはその母集団の数も示されていなければならない。実際の解析には、手計算もしくはコンピュータが有用である。

(12)Preparing the Final Report最終報告書の用意

 最終報告書は実験計画書に沿って書けばよい。実験途中に部分的に書いてもよい。

@導入the Introductory section 問題と研究の目的を簡潔に述べる

A方法the Methods section 正確に実験方法、判断基準を述べる

B 結果と考察the Results and Discussion section

データは表にして簡潔に表し、記述と考察をつけ加える。

考察では、研究結果の暗示するもの、過去の研究との関連に加え、研究の限界(問題点、困難、潜在する間違い、バイアス)についても述べる。

(13)Importance of Good Communicationコミュニケーションが大切

 すべての研究は過去の研究と関連があり、研究者は自らの研究を分かり易く人に伝える義務がある。発表の際は、専門用語を避け、表は完全で簡潔なものにすべきで、グラフや図で視覚に訴えるのも良い。

(14)Importance of Investigator Worry研究者は心配することが大切

 研究者は全ての詳細に対して、慎重で懐疑的すぎるぐらいでよい。データ収集が正しく行われているかをチェックし、収集したデータは失わないようにコピーをとる。全ての計算は二度試し、新しく作ったプログラムはサンプルデータで動作を確かめ、手計算の結果と照らし合わせる。全ての表をチェックし、論文の校正も行う。

 

(4) Fallacies in numerical reasoning 担当:竹之内

 課題で出されたこの論文は数値データの統計学的な解釈を行う際に陥りやすい誤りのうち代表的なものを具体例を用いて示したものです。まとめを読めば大体の内容は分かると思いますが、わかりにくい場合は実際に論文を読んで具体例に当たってください。

以下に誤りを列挙していきます。(時間のない人は下線部だけ読んでください)

 

1) Denominators (分母)

 臨床研究では例えば、病気にかかった人の数などの数値データを統計学的に処理して病気Aよりも病気Bの方が死ぬ確率が高いなどといったように判断を下すわけですが、この様な比較を行う際に意味を持つのは(多くの場合)実際に病気Aで死んだ人の数ではなく、病気Aにかかった人の中で死んだ人の割合です。つまり死んだ人の数(=分子)に加えて病気になった人の数(=分母)がデータとして必要なわけです。

しかしながら分子を「確率と同じ意味を持つ」ものであるかのように誤解してしまう(つまり「分母を忘れる」)ことがあります。また分母として間違ったデータを使用してしまうことがあります。さらには自分がデータを集めた母集団が世間一般からみて偏った母集団である可能性もあります。

 

2) Comparison groups (比較対照群)

いわゆるcontrolをとらなかったり見当はずれなcontrolをとってしまうことがある。

例えば、「ある薬を飲むと10000人に2人も自殺する」なーんて話が新聞にのったために「なんて怖い薬じゃ」といってその薬を使う人が減ったが、実際には毎年、薬を使っていない人の10000人に5人が自殺していたというのが(こんな内容の話をなんかの授業で聞きました。ちなみに数値は嘘です。)controlをとらないことによる誤った判断の例でしょう。またジャマイカから来た人が渋谷で「オー、渋谷ノ高校生ミンナ白イデース。」というのは誤ったcontrolをとる例でしょう。

 

3) Age

 農村と都市部で虚血性心疾患による死亡率を単純に比較することはできません。

 それはまず農村と都市部では平均年齢が違っているからです。このように農村と都心部というグループ分けの中に隠れている年齢という因子を忘れてしまうことがしばしばあります。

 また死亡年齢を考える上では単純に死亡した年齢の平均を考えるだけではだめです。農村にはお年寄りが多いのですから虚血性心疾患による死亡年齢を考えるとき農村の方で平均死亡年齢が高くなるのは当たり前でしょう。この場合の誤りは集団の年齢分布による年齢調整をしていないことです。

 

4) Follow-up

ある病気Aは診断されてからぴったり138ヶ月と13日で死ぬとしましょう。ある病気Bは診断されてから毎年5%ずつ死んでいくとしましょう。今日100人が病気Aと診断され、別の100人が病気Bと診断されたとしましょう。ある研究者が10年後にこの人たちを調べると、病気Aの人は100人生きていて、病気Bの人は60人くらいしか生きていません。そうすると病気Bの方が予後が悪いと言えるのでしょうか?14年後に同じことを調べると、病気Aの人は全滅していますが、病気Bの人は半分生き残っています。このようにProspectiveな臨床研究を行う場合、ある時点の死亡率を比較することにはあまり意味がありません。本来ならば全員死ぬまで調査を続けるのが筋なんですが、そうすると医者の方が先に死んでしまいます。

それから長期のfollow upを行うと必ずどこに行ったかわからん人が出てきて、こんな人をどうするかにも頭を悩まされます。

こういった場合は生命表を用いたり、何年生きた人はどのくらい今年死ぬかといった区間死亡率が役に立ちます。

 

5) like with likeによる比較

いくつかの集団の比較を行う上では、比較を行う前(集団を分けるときなど)に差があってもいけないし、調査中も扱いの差があってはいけないし、データの取り方とか解析方法も一緒にしておかないといけません。要するに他の条件は一緒にしとけということです。

例えば仮に一般に長男より次男の方がお母さんも慣れてほったらかしにするため、ちょっと甘えん坊になるとしましょう。ある結婚相談所のおばさんが長男の集団と次男の集団を比べて、長男の方が甘えん坊の傾向があることを見て「長男はやめときなさい!遺伝子が甘えん坊にできているから、将来あなたの子供も甘えん坊になって困るわよ!」なんていうとまちがいなわけです。遺伝子云々は同じ育て方をしてからじゃないといけません。

 

6) サンプルから複数のデータを得るときの誤り

20年間毎年110人の男性の体重を計ったとしましょう。そうすると200のデータが出てくるんですがこれは200人からとったデータとは違います。これを統計処理するときに200人から取ったデータとして扱うことは間違いです。もっと典型的な話をすると、1秒に11人から100回年齢を聞いたとしましょう。(「あなた何歳ですか?あなた何歳ですか?あなた何歳ですか?…」)そうするとその人が25歳の人だったとすれば、平均値は25になりますがこれは決してそこにいた100人の平均年齢が25歳だったということを示すものではありませんよね。

つまりサンプルから複数のデータを集めるとき、全体のデータ数がサンプルの数なのではないということです。

 

7)  正常限界に関する誤り

ASTの正常範囲はどうやって決めてるの?」なんて聞かれると、「正常と思われる人を集めてきて集めたデータの平均値±2SDです」と答えておけばいいのでしょうが、正常の限界を2SDだといっていられるのはデータが正規分布にしたがっているかそれに近似できる時だけです。医学で扱うデータの中には正規分布に従わないものや、正規分布として近似できないものが少なくありません。こういった場合、単純に2SDを正常限界として用いるのは誤りになります。

 

8) いっぱい検定することによる誤り

東大医学部生にTEGやらYGテストやらをやって、一つ一つの項目について有意水準0.05で世間一般の人と比べてみた場合、答えの分布が500個の項目のうち25個で違っていた。これを知った著名人が「ということは、俺がにらんだ通り、東大医学部生はやっぱり変だ」などと判断をしてしまうという誤りが「いっぱい検定することによるあやまり」です。有意水準0.05ということは差がなくても5%の確率で有意差が出てしまうので25項目ぐらいで変なことがおこってもかまわないわけです。

このような場合には、有意水準0.05で話をしたいのならば、全体で有意水準が0.05になるように一つ一つの項目の比較に用いる有意水準を調整しないといけないわけです。(具体的にはM2の時の統計学の本を読んでください。)

 

9) Berkson s fallacy

 Berkson s fallacyとは母集団から標本として抽出される割合が個々の要素の性質に応じて異なると、偽の相関関係が得られる場合があるということです。

 具体例ですが、僕が眼鏡をかけた女性の8割を気に入って是非とも「友達」になろうとし、眼鏡をかけていない女性はちょっと苦手で2割くらいしか眼中になかったとしましょう。そうすると一般の女性の5割が眼鏡をかけているとした場合、眼鏡をかけている5割のうち8割つまり僕の周りの4割に相当する人が僕の友達になります。いっぽう眼鏡をかけてない人5割のうち2割つまり全体の1割が僕の友達になります。そうすると僕が友達だと思っている女性は全体の5割になりますがそのうちの8割は眼鏡をかけていることになります。一方、男は別にどうでもいいので友達の半分が眼鏡をかけていることになります。このことから僕がもし「一般に女は男より眼鏡をかけている人が多い」と判断すると、それが間違いであることは分かってもらえるでしょう。これが具体例なんですがもしかするとかえって分かりにくくなってしまったかもしれません。(それから女性の方がコンタクトをしている人が多いはず…なんてのもなしです。)

 

 

U.以下について知るところを記しなさい。

(1)日本国憲法、厚生省の設立、及び大学の公衆衛生学教室の開設 間の関係 担当:西村

◎日本国憲法25

@ すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する

A 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

1項で健康な生活を国民の権利としてとらえ、第2項においてこれに対する国の責務を規定している。公衆衛生(医療を含む)は公衆衛生行政で実現される。

 

◎ 厚生省の設立・大学の公衆衛生学教室の開設

日本で公衆衛生及び医療に組織的な行政が考えられるようになったのは明治維新以降である。ヨーロッパへ使節団が派遣された結果…

1874.「医制(76)」制定 。コレラ・ペストの伝染病対策を行う

1875. 「内務省衛生局」設置。

また、ドイツ医学の流れを汲んで、東京大学・京都大学に衛生学講座が開設される。

1937. 「保健所」の設置。国防力強化の為に結核対策。BCG接種が進められる。

1938. 「厚生省」の設置。結核予防法などの整備が進められる。

大戦後、アメリカの影響を受け、衛生学とは別に公衆衛生学の講座が開講。

現在、衛生行政は厚生省(一般衛生行政)、環境庁(環境保全行政)、文部省(学校保健行政)、労働省(労働衛生行政)により行われている。

 

「産業革命→イギリスで公衆衛生がうまれる→ドイツ・アメリカでも→明治維新以降の日本にも伝わる→内務省衛生局の設置→保健所・厚生省の設置→大戦→公衆衛生学講座開講」といった感じでしょうか。

 

(2)ヒポクラテス、ラマツィーニ、レッグの格言、及び日本の労働安全衛生法の

共通テーマと個別テーマ 担当:西村

 

☆ヒポクラテスHippocrates

ギリシャ時代。「ヒポクラテスの誓い」は従来、倫理の規範とされてきた。病気の原因は4つの体液(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)のアンバランスで、その組み合わせでいろいろな病気が出現するとした。また環境の重要さについての指摘もある。今日から見れば受け入れられないが、観察・推論・検証という態度は評価されるべきだろう。

 

☆ラマツィーニ Ramazzini(1633-1714)

産業医学の父。(あるいは労働衛生学の祖)1700年に「働く人々の病気(De Morbis Artifucum Diatriba)」を著し、この中で40の職業による病気と症候を正確に記述し、職業病について啓発した。

 

☆ レッグ(T.M. Legge)の格言

イギリスで最初の医学監督官(1898年に制定された医学監督官の制度による)。その30年間の実地の研究活動を通じてイギリス職業医学の発展に多大な貢献をした。彼は産業医学書を著し、その中で職業病予防原則として、「経営者責任」「環境管理優先」「雇用者への危険通知義務」「鉛中毒予防」といういわゆる「レッグの4大格言」を説いた。

 

☆ 日本の労働安全衛生法

1972年に公布・施行された、労働災害防止のための総合立法。1947年制定の労働基準法の安全衛生部分を独立させたもの。危害防止基準の確立、責任体制の明確化、事業者の自主的活動の促進措置などにより労働者の安全と健康を確保し、快適な作業環境を形成しようとしている。

 

(日本では明治維新後に富国強兵政策を基本とした国家のもとに、職業保健活動が進行。働く人々に対する一般的な労働条件と職業保健に関する保護条項が整備されたのは、第二次大戦の後、1947年労働基準法の制定が初めてである。以降、1955けい肺法、1960じん肺法、1964労働災害防止団体法、1967一酸化炭素中毒特別措置法、1970家内労働法、1972労働安全衛生法が制定されていく。)

 

(3)Factory Act vs Public Health Act , T.サックラー vs E.チャドウィック 担当:西村

 

C.T.Thackrah & Factory Act(1833)

サックラーは1831にイギリスでの最初の労働衛生学書「技術・商業・職業および都市の生活、さらには生活習慣の健康と寿命に及ぼす影響」を著した。このなかで児童の雇用に関連して、職業上悪条件の健康への障害(とくに繊維工場の粉塵による気管支炎等の肺疾患)を指摘した。イギリス議会の人道派が工場制度を調査する委員会を発足し、1832に報告書を提出、1833に工場法Factory Actが成立し、工場監督官制度が導入された。

イギリスのFactory Actは、1819に最初制定されたが有効ではなく、以降何度か改正されたがほとんど役に立たなかった。1833年に制定されたものが、初めての有効な工場法Factory Actであった。以降工場法は次々に整備されていった。(1844任命工場医制度、1895職業病の届け出制度、1898医学監督官制度、1925職業病補償制度 等)

 

Edwin Chadwick(1800-1890) & Public Health Act(1847)

産業革命以降、イギリスは反復するコレラ等伝染病の侵入と定着,結核の爆発的な増大という深刻な健康問題に直面していた。Chadwickは「大英帝国の労働者階級の衛生状況に関する報告 report on an inquiry into the sanitary condition of the laboring population of Great Britain」を提出し、地域保健活動の重要性を説いた。(1800年代のイギリスの衛生改革運動)

Chadwickによりイギリスに1848年全国衛生局National Board of Healthが設立し初めての衛生官が生まれた。同じ1848年、世界初の衛生立法で、行政が市民の健康に責任をもつ形の公衆衛生法Public Health Actが制定された。

 

(4)鉛中毒の臨床像と非顕性の健康影響 (subclinical health effects of lead) 担当:西村

 

鉛中毒は低曝露からの量・影響関係が明らかで、中毒には閾値があるという説に反する例である。鉛は広く用いられている金属で曝露の機会が多い。荒記教授の専門分野。

 

鉛中毒の臨床像は次の通り

1.造血器障害

ヘム合成酵素およびALA(アミノレブリン酸)脱水酵素の阻害により貧血が生ずる。貧血が出現するのは血中鉛濃度80μg/100g程度からだが、それ以前にALA脱水酵素の著しい低下、尿ALA増加、尿CP(コプロポルフィリン)の増加がみられる。

(症状としては顔面の蒼白、蝋様黄色化、易疲労、神経過敏、頭痛。)

(鉛中毒予防規則では、鉛作業者の健康診断の際に生物学的モニタリングの指標として血中鉛と尿中δALAの測定が掲げられている。)

2. 消化器障害

消化器症状。高濃度曝露を受けたときには腹部の激しい疼痛(=鉛疝痛)

(食欲不振、腹部不快感、腹痛、便秘。)

3. 神経系障害

末梢神経障害を反映した末梢神経伝導速度の低下。(血中鉛50μg)

重症の場合には、四肢、特に上肢に伸筋麻痺が生ずる。(血中鉛>150μg)

 

※ 「非顕性subclinical effectの影響」…環境が原因で体内に起こる変化のうち

通常の臨床検査で異常が発見できない症状。鉛中毒では赤血球のδアミノレブリン酸(δALA)脱水酵素の低下、末梢神経伝導速度の低下がそれにあたる。

※ 「顕性の影響」…通常の臨床検査によって異常が発見できるような症状。鉛

中毒では貧血、腹部の激しい疼痛(鉛疝痛)、伸筋の麻痺、がそれにあたる。

 

5)神経生理学的方法、神経行動テストバッテリー、産業/神経行動学間の関係 担当:児玉

近年、職場および一般環境中の環境管理が進んだ結果、明白な臨床症候を伴う環境因子による疾患は激減している。しかしこの一方で、通常の臨床診断法では臨床症候が認められない非顕性の顕好影響とその早期発見の重要性が増してきている。通常の臨床診断法では見つけることのできない、産業環境因子による健康障害を、末梢神経伝導速度、大脳および脳幹誘発電位(短潜時体性感覚誘発電位、、視覚誘発電位、聴性脳幹誘発電位)、事象関連電位、神経伝導速度分布といった神経生理学的方法や、心電図RR間間隔変動、、身体平衡機能、神経行動テストバッテリー、質問紙法および精神科診断面接法などで見つけだす学問として産業/神経行動学が生まれた。

 

6)生活習慣病、行動科学、行動医学間の関係 担当:児玉

今日における主要死因である悪性新生物・心臓病・脳血管障害・高血圧症などにおいて問題となる食習慣や家族関係、社会的役割などは、個体要因とも環境要因ともみなし難いことから、かつての病原体のように独立させて一つの要因とみなし、疾病あるいは健康状態との関わりが分析されている。すなわち、ライフスタイルあるいは生活習慣という言葉で言いかえられ、これによる疾病を生活習慣病と位置づけ、これらの要因による健康状態の改善についての試みが注目されている。

具体的には、行動疫学(behavioral epidemiology)が現在アメリカにおいて提唱され、この言葉の標榜のもとに、行動⇔暴露・ある種の特徴→潜在的疾病の進行という関係を想定し、原因となる行動あるいは行動の原因を分析し、より健康的な生活行動への転換を図るための手がかりを得ようとする極めて実践的な疫学研究が進められている。

【注】 問題文には「行動科学、行動医学」とありますが、教科書にそのような言葉は載っていませんでした。でも、内容としてはこれでよいのではないでしょうか。

 

7)作業関連疾患とTHP活動 担当:児玉

作業に関連した健康障害の原因が重激な単一の原因から、労働以外の要因も含めた多数の要因が複合的に作用して発症するものに変わり、健康障害と労働条件との因果関係を証明することがますます難しくなり、因果関係の証明を待って職場に置ける対策を実行するのではなく、労働との関連が認められた段階で労働条件および生活環境・習慣の改善を行う必要が認識されはじめた。そこで、我が国における労働衛生の対象が、労働要因との因果関係が強いところの職業病から、職業病を含んだ広い疾患概念を持つものに変わり、「労働生活中の要因が発生あるいは症状悪化の一つの原因となっており、労働条件の改善や職域における健康管理により、症状を軽減したり、発症率を低下させうる疾患という意味で用いられる広い疾患概念を指す言葉として、作業関連疾患という言葉が生まれた。今後の産業保健活動の中心は Total Health Promotion(THP) と呼ばれる、産業医が中心となって他の健康作りスタッフと共にストレス管理を含めた心身両面からの労働者の健康指導を行うことになる。

 

8) Confounding factor (交絡因子)の重要性 担当:児玉

交絡因子とは、研究群と対照群で異なって配分されている特性や変数で、評価すべき結果に影響を与えうるもののことである。

たとえば、飲酒と喫煙の関連について調査したとき、コホート研究の結果、飲酒群の方が肺ガンの発生率が10倍高かったとする。しかし、飲酒する人が非飲酒者に比べて喫煙する割合が多いとすれば、これはあやまりとなる。

このように正しい統計調査に際しては、交絡因子に関する問題を回避することが重要なポイントの一つである。そのための方法の一つは、交絡因子となる因子をマッチングしてデータの偏りをなくすことである。あらかじめ交絡因子として働くと思われる要因を想定して行う場合もある。

偶然が交絡因子となって結果に違いが出ることもあるが、これを回避する直接的方法はない。消去法(統計的有意差検定)で仮説を検定することになる。すなわち、偶然の入り込む確率を算出して仮説を検定する。

調査後でも群間に違いがあるならば、性質を比較して各々異なっている点を見つけ出すことによって交絡因子を発見することができる。交絡因子が見つかればデータ調整をする。具体的には同じレベルの交絡因子をもつ集団に層別化し、同じ交絡因子レベルで比較して差の有無を検定する。多変量解析の手法は、同時に二つ以上の変数を調製する場合に有効である。

 

(9) Signed rank test vs. Paired t-test 担当:三村

 統計的な手法は、半ば慣習的に計量的なメトリックなデータを扱うパラメトリックなものと、分類、順序的なノンパラメトリックなものにわけられている。パラメトリックなものの中にpaired t-testがあり、ノンパラメトリックのものの中にsigned rank testがある。大ざっぱに言って、前者は分布の前提が窮屈で、計算がやや面倒であるが効率はよく、後者は分布の前提に頑健で、計算が簡単であるが効率はよくない。

t分布を用いた計量値の区域推定、仮説検定のうち1標本問題がある。これには2種類あり、本来的に1群、1標本のデータを扱う場合のほかに、対応のある2群のデータOn(Xi Yi)について、差とか比をつくることが妥当であれば、あらためてOn(Xi)となるので、前者とおなじくなり、差が0か、比が1かという検討に帰着する。この差をとる検定をpaired t-testと呼んでいる。

計算値データを小さいものから大きいものまで並べて順位付けをして、この順位をデータとして扱うものがrank testであり、計算値としてのデータは求められないが順位はつけられるという場合にも利用でき、一般に分布の前提がきわめて弱い。このうち1標本t検定に対応したものをSigned rank testと呼ぶ。

 

(10) 地域保健の新しい動向 担当:三村

 疾病構造、人口構造が多産多死から少産少死へと移行し、すべての疾患をなくすことよりも疾患をコントロールすることが地域保健の課題となった。たとえば、地域保健計画に関して、1990年より高齢者保健福祉推進十カ年戦略が2000年を目標年としてスタートし、市町村が老人福祉計画をたてることが法制化され、地域保健医療計画と整合性のある計画策定作業が全国で進行中である。

 

(11) 地域医療の新しい動向 担当:三村

近年、慢性疾患を中心とした少産少死へと移行したため、市町村保健衛生担当課では、住民に最も近い公衆衛生行政機関として、各種の成人病検診や在宅寝たきり者の支援まで、幅広く活動しており、構成スタッフとしては事務職のほかに保健婦、看護婦、ホームヘルパー、理学療法土、栄養士など、年を追って多くの職種が集まり充実してきた。また、休日夜間医療を例にとって見る。休日および夜間の急病に対応する施設として、1974年以来、休日夜間急患センターが人口5万人以上の市に整備されてきた。また都市の医師会を単位とした、在宅当番医制により、医師会員が、交代で急患を扱うシステムも普及してきている。より重症例については、二次医療圏を単位に地域の病院が当番日を決めて交代で対応する病院群輪番制や、複数の医師が同じ医療機関をチームとして利用する共同利用型病院において、必要スタッフを配置する対応が進められている。さらに、初期救急や病院群輪番制などの二次救急の後方医療機関としての救命救急センターも必要となる。現在、圏域内人口30万人以上の二次医療圏や三次医療圏を単位に、24時間診療制を敷き、重篤な救急疾患に対応するべく段階的に整備中である。

 

(12) 国際保健の主要テーマ 担当:三村

 国際保健とは、一国のみでは解決できない疾病や保健の問題を、国際間の協力で取り扱う実践的保健医療学の新分野であり、第一義的には地球の8割の人口を占める開発途上国の保健問題の改善に関する国際協力学ともいえる。しかし、近年チェルノブイリ原子力発電所の事故で見られたような環境の汚染や破壊、エイズの流行等のように、地球規模の社会的保健問題の脅威は増加しており、先進工業国でも国際協力が必要とされてきている。具体的な事業内容としては、公衆衛生の基盤に立って、国際免疫、国際環境保全、国際保健医療協力などをおこなうことをテーマとしている。

 

13) 老人保健法の内容 担当:竹之内

【解答】

老人保健法は、「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的に実施し、もって国民健康の向上及び老人福祉の増進を図ること」を目的としている。対象は疾病・負傷等により寝たきりの状態にある老人あるいはこれに準ずる状態にある老人を対象としている。具体的には市町村が実施主体となって

@ 健康手帳の交付

A 健康教育

B 健康相談

C 健康診査

D 医療

E 機能訓練

F 訪問指導

などのサービスを行っている。

 

14) 環境保健の主要トピックス 担当:竹之内

なんだかとっつきにくい問題です。シラバスのキーワードの説明を中心に歴史を踏まえて説明したつもりですが途中で何を書いて(欠いて?)いるのかわからなくなってきました。

【解答】

・昭和30年代後半からの高度経済成長に伴って各地で環境破壊、環境汚染が進み、被害を生ずる事態となり、昭和42公害対策基本法が定められた。また昭和46年には公害防止・自然保護など環境保全の総合調整を目標として環境庁が発足した。平成5年には公害対策基本法が廃止され環境基本法が成立した。環境基本法は「環境保全の基本理念を定め、国・地方公共団体・事業者・および国民の責務を明示し、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し現在および将来の国民の健康で文化的な生活の確保と人類の福祉に貢献する」ものである。この目的を示す第1条の条文からは公害対策基本法にあった「公害」の文字が削除され、これまでの公害問題への対応としての環境行政から地球規模も含めた環境問題全般への前向きの対策を求められる時代に対応した環境行政への変換を示している。

・人の活動に伴って生じ、人の健康・生活環境に被害を生じるものを公害と定義し。1.大気汚染2.水質汚濁3.土壌汚染4.騒音5.振動6.地盤沈下7.悪臭を典型7公害として定めている。

・近年では典型的公害事件(水俣病・イタイイタイ病・四日市喘息・慢性砒素中毒)などに代表されるような環境汚染への「急性大量」暴露による被害は影を潜めたが、有害廃棄物などに関連した環境リスクが潜在化している可能性がある。また、さまざまな化学物質への微量・慢性・複合型の暴露についてはその影響がいまだ明確ではなく、暴露を受ける人口も非常に多いことから今後のリスク・影響評価が重要な課題となっている。

PRTRとは、Pollutant Release and Transfer Register(環境汚染物質排出・移動記録)の略であり、さまざまな排出源から排出または移動される潜在的に有害な汚染物質の目録もしくは登録簿のことをいう。このPRTRを用いたPRTRシステムは、事業者が対象となる化学物質毎に工場・事業所から環境への排出量や廃棄物としての移動量を自ら把握して、その結果を行政に報告して行政がそれを何等かの形で公表するシステムです。

・近年よく話題に上る化学物質としてはダイオキシン、環境ホルモン、PCBなどがあります。ダイオキシンは他の化学物質の製造、燃焼にともなって生成され、ごみの焼却や、製紙・パルプ工場で漂白に塩素を用いた場合に発生することが知られています。環境ホルモンはホルモン類似作用を持ち人やその外の生物の生殖と発育という基本的な生物の生存条件に影響を与える可能性が懸念されている一連の化学物質を指します。PCB(ポリ塩化ビフェニル)は環境中で分解されにくく、生物の脂肪組織に蓄積しやすい性質を持っており、母乳中に検出されて話題を呼びました。製造はすでに中止されてますが、今後安全に処理していく方法が模索されています。

・またこれらの化学物質は発癌のみならず、脳神経に与える影響、胎児に与える影響、呼吸器・アレルギー疾患との関連、内分泌疾患との関連などがある可能性があり、今後幅広い医学的研究が必要です。

・公害や環境破壊を繰り返さないために、また、環境問題の根本的な解決のためには、過去の汚染の除去だけでなく、環境汚染を未然に防ぐことが必要となります。このため開発行為など環境に著しい影響を与える可能性のあるものにたいして、環境に与える影響を事前に予測し、影響(環境リスク)をあらかじめチェックすることを環境影響評価(環境アセスメント)といいます。また環境の汚染の状況を常に評価するモニタリングも重要です。

・これからの環境保健では日本国内の問題だけではなく、温暖化・酸性雨など地球規模で取り組まなければならない問題が多い。

・そのほか地球環境に取り組む上で、環境への負荷をできるだけ少なくし循環を基調とする経済社会システムを確保すること(「循環」)、健全な生態系を維持・回復し自然と人間の共生を確保すること(「共生」)、環境保全に関する行動に参加する社会を実現すること(「参加」)、国際的取り組みを推進すること(「国際的取り組み」)などが基本理念として掲げられている。

 

取り留めのない文章になってしまいました。あとは新聞やらなんやらを読んでください。

 

15)わが国の健康政策の変遷 担当:竹之内

【解説】

戦後半世紀にわたっての、日本の経済成長による所得水準の向上、栄養状態や衛生状態の改善、医療機関等の整備、医療関係者の努力により、日本は世界一の長寿国となりました。また、疾病構造が変化し成人病やアレルギーといった疾患が多く見られるようになりました。これに伴い、国民の健康に対する関心が高まるとともに、医療に対する要望も多様化し治療だけでなく健康増進や疾病予防、リハビリテーションといった幅広い医療が求められるようになってきました。

全体としては疾患を治すことから疾患を予防し健康で快適な生活を送るための「健康づくり」が注目されるようになったといってよいでしょう。

「健康づくり」という観点からみると厚生省は昭和53年度に第一次「国民健康づくり対策」で健康づくりの啓発普及を行い一次予防(健康増進・疾病の発生予防)および二次予防(早期発見、早期治療)を重視した施策を実施しました。その後、人生80年時代の到来により単に寿命を延ばすというだけでなく、いかに有意義に生きるかが重要となったため、疾病の発生予防やさらに一歩進めて積極的に健康度を増すための「健康増進」に力点を置く必要性が生じ昭和63年度からは第二次「国民健康づくり対策」として「アクティブ80ヘルスプラン」が実施されています。

この「アクティブ80ヘルスプラン」の特色は@疾病の早期発見・早期予防という「二次予防」から疾病の発生予防・健康増進という「一次予防」に重点を置く、A栄養・運動・休養という健康づくりの三要素のバランスのとれた健康的な生活習慣の確立を図ることに重点を置く、B公的セクターによる健康づくり施策に加え民間活力の積極的導入を図る、ということである。

その外に「健康教育」「健康管理」「健康相談(施設)と保健指導」「健康診断と検診」などといったキーワードをもとに政策の移り変わりをまとめてみてください。

 

−過去の出題から−

●原子力発電所の放射能漏れによる健康障害と治療

【解答】

人体が放射能被爆をしたときに受ける影響としては、以下の4つを考えなければならない。

@急性影響

(a)急性放射線症候群

これは短時間に大量の放射線を全身被曝すると発症してくる一連の症候群を総称したものである。症状は線量に応じて被曝した標的臓器のそれぞれの症状が加算されて出てくる。以下、被曝線量と症状、その治療法についてのべる。

01Gyの被曝では特に症状は現れず、治療も必要でない。

12Gyの被曝では約半数に悪心・嘔吐が出現し、中程度の白血球減少が見られる。特に治療を必要としないが、血液学的な経過観察が必要である。

210Gyの被曝では悪心・嘔吐は必発で、さらに重度の白血球減少、紫斑、出血、感染が見られる。3Gy以上の被曝では脱毛も認められる。治療としては輸血、抗生物質投与、骨髄幹細胞刺激因子投与などを行い、6Gy以上の被曝では骨髄移植も考慮しなくてはならない。

1015Gyの被曝では上に述べた症状に加えて腸管の障害も現れてくる。治療としては輸液によって電解質平衡を維持するなどの姑息的治療を行うのみであり、予後は悪い。

・数10Gy以上の被曝では中枢神経系も障害され、被曝後ごく短時間のうちに死亡する。

(b)放射線皮膚障害

 皮膚が局所的に5Gy被曝すると、一時的な紅斑と脱毛が生じ、25Gyでは一時的な潰瘍がおこり、50Gyでは永久的な潰瘍が生じる。

( c)水晶体の放射線障害

 放射線被曝の晩発影響として白内障が生じてくる。白内障が生じるしきい線量は1回被曝で5Gy、分割被曝で8Gyである。

(d)生殖腺の放射線障害

 生殖腺が被曝すると男性では0.15Gyで精子の減少が見られ、一時的な不妊となる。女性では0.651.5Gyで一過性の不妊を示す。高線量の被曝では永久不妊となるが、1回被曝による永久不妊のしきい線量は男性で46Gy、女性では36Gyと考えられている。

A晩発影響

 放射線被曝の晩発影響として、発癌が最も重要である。特に白血病は他の癌に比べて潜伏期が短く、被曝後数年後から生じてくる。白血病の相対リスクは被曝線量に依存して直線的に増加するとされている。その他、放射線被曝によって発癌のリスクが有意に高まるものとして甲状腺癌(特に乳頭腺癌)が知られている。

B胎児への影響

 胎児期の主な放射線影響は(a)胚死亡(受精から9日、着床前期)(b)奇形(受精後28週、器官形成期)( c)精神発達遅滞(受精後815週、胎児期)(d)発癌(全期間)(e)遺伝的影響(全期間)などである。このうち胚死亡、奇形、精神発達遅滞は確定的影響であり、しきい値は0.1Gyとされている。

C内部被曝

 放射性物質を体内に摂取することにより、体内から被曝を受けるものである。体内に取り込まれる経路としては(a)汚染された空気を吸い込むことにより胚から直接血液内に入る、(b)食物・水などの経口摂取に伴い消化管から吸収される、( c)汚染した皮膚あるいは開放創から血中に入る、の3つである。内部被曝の場合には体表に付着した、あるいは体内に摂取された放射性物質を可能な限り早期にかつ十分に皮膚及び体内から除去することを目的として治療を行う。具体的には皮膚の除染、催吐剤・下剤の投与により経口摂取された放射性物質を体外に排泄する、キレート剤の投与によって血中から除去するといった方法がある。

 

●出来高払い制と医療費問題

【解答】

国民医療費の増大の要因としては、人口の増加、高齢化、健康権意識の高揚、医療費の軽減無料化、疾病構造の変化、医療保障制度の給付増大、医療品等の価格の上昇など様々なものがあるが、中でもよく取り上げられるのは高齢化、医療の高度化・機械化などである。

医療費の高騰によりその適正化に向け各国で支払い方式の検討がなされている。日本では、現在出来高払い制(fee for service)をとっている。これは医療行為を診療、投薬、注射、検査、処置、手術などに分割し、それぞれの単位について料金を定め総計する方式である。

長所は合理性(原価主義)であり、患者の選択の自由、医師の処方の自由、料金交渉の自由、fee for service方式といわれる。短所はincentiveの逆転であり、重症志向、非協力的、サービス過剰、「モノ」に偏る、資源配分の非効率などが挙げられる。

 

●公衆衛生学の目的、対象及び方法

◎目的

人々を疾病から守り、健康を保持、増進し、その精神的肉体的能力を十分に発揮できるようにすること。健康とは単に病気・虚弱でない、のではなく、肉体的・精神的・社会的に完全に良好な状態にあることをいう。

◎ 対象

community。村・町・都市・地方・国など、共同生活の領域である。

◎方法

幅広い活動分野をもつ。認知、評価、解決の学問であり、その方法としてはhuman biology , human ecology , demography(人口統計学) , epidemiology & statistics, social & behavior scienceが使われる。

 

●世界の子供の健康への優先戦略

ユニセフ・WHOによれば人口の8割を占める発展途上国では専門的に文化した医学ではなく地域に根ざしたprimary health care(PHC)が重要であり、PHCの実現に向けて多くの国際協力が行われている。また、ユニセフ・WHOは世界の子供の健康への優先戦略として次の3つを掲げている。

1:予防接種 expanded program on immunization; EPI

DPT,ポリオ,麻疹,結核の6種予防接種で2,000,000deaths/yearを予防。

2:経口補液法 oral rehydration therapy; OPT

砂糖と塩をまぜた飲料水による簡便補液法により、1,000,000deaths/yearを予防。

3:母乳育児 breast feeding; BF

不潔で栄養不十分になりやすい人工栄養でなく、母乳育児を促進。

 

●いま医療に問われているもの

「医療の質」について

単なる延命処置ではなくQOLをいかに向上させるか、ということも必要になっている。消費者ニーズが高度化・多様化しているので消費者重視の医療が求められている。「informed consent」の問題も今後ますます重要になるだろう。

「医療サービスの提供のあり方」について

ネットワークの充実、医療機関の総合化とともに機能分化も図っていく

 

●人口動態および生命表

人口動態とは、ある集団における出生・死亡など人口の動きを捉えたもので、日本では戸籍に基づき作成される。出生、死亡、死産、婚姻、離婚について調査される。出生率、死亡率は人口10万人あたりの年間出生数、死亡数であり、合計特殊出生率は女性が一生の間に生む子の数、年齢調整死亡率は人口構成の異なる集団の死亡率を比較するため標準化したものである。

生命表とはある時点における年齢別の生存数と死亡数をもとに、この年齢別死亡率が恒常的に続くと仮定したとき、一定数の出生者が年齢によってどのような人口を示すかを示したものである。平均寿命は0歳児の平均余命である。

 

●放射線管理の基本

放射線管理=放射線防護とは、放射線の有害性と有用性の矛盾の中で、適切な放射線利用を目指すものである。ちなみに今年は授業が行われなかったはず。

ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告では、以下の基本原則が示されている。

1:行為の正当化justicication 本当に必要か?

2:防護の最適化optimization 防護の三原則 時間・遮蔽・距離

3:個人線量限度dose limit

(おまけ)

ten day rule

妊娠可能な女性に対してのX線検査は、月経開始から10

以内に実施しなければならない

 

●英国のNational Health Service Act

イギリスでは1942年の社会保障制度に関するビバリッジ報告において、全国民をカバーし、かつあらゆる診療科目にわたる包括的な保健サービス制度(Comprehensive Health and Rehabilitation Service) の創設が提言された。この提言は、戦時中の挙国一致内閣によって受け入れられ、戦後の1946年に、National Health Service Actが制定された。この法律は、イングランドとウェールズにおける包括的な保健サービスの設立を推進するとともに、保健サービスによってイギリス国民の肉体的、精神的な健康を確保するために、予防、診断、治療を行うことは政府の義務であるとしていた。国民保険制度サービス制度は、社会保障制度全体の再編成と歩調を合わせて、194875日に実施に移された。

参考 ビバリッジ報告

19416月、社会保障制度の再編成のために、社会保険及び関連サービスに関する各省関係委員会(委員長W.H.ビバリッジ)が設置されたが、この委員会の検討結果が、いわゆるビバリッジ報告(社会保険および関連サービスに関する報告書、1942)である。

同報告は、国民を窮乏、疾病、無知、不潔、怠惰から守るために、社会保険の形式による個人と国家の協力に立脚した総合的な社会保険制度の創設を提案している。具体的には、児童手当、無料の公衆衛生サービス(医療サービスを含む)及び完全雇用政策を中核とし、拠出をまかなえない人々については公的扶助制度で補うことにしている。また、社会保険制度については、@均一給付、A均一拠出、B行政責任の一元化、C総合性(包括性)、D給付の妥当性(最低生活の保障)、E退職者のニーズに応えること(被用者、自営業者、主婦、無業者、労働年齢に満たないもの、労働年齢を超えて退職したものの6グループに分けて考える)6原則に基づき、再編成するものとしている。

ビバリッジ報告は、過去においてその時代の必要性によって創設され改正されてきた各種社会保険及び関連サービスを、第二次世界大戦を契機に統合かつ体系化したものであり、あらゆる事故に対処し、すべての国民に最低生活を維持する保障を行おうとしたものであった。報告は、国は最低保障をすれば足り、それ以上の保障は各人の個人的努力によってなされるべきであるとの理念に基づいている。

 

シケプリは以上です。頑張りましょう。

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