2009.6. GT-R試乗体験記


今回の試乗はGT-R。しかも、12時間借り出して、一般道・首都高速・箱根ターンパイク(上り・下り)

芦ノ湖スカイライン・箱根スカイラインと相当な距離を走りました。

同乗者は友人のO君。彼のドライビングスキルは圧倒的に僕より上ですが、大人二人で平日に
ああだこうだ好き勝手言いながらGT-Rを道路交通法の範囲内で全開にしまくってきました。


まず、お断りしなければいけないのはこの車体はおそらく初年度登録。5万キロの過走行車両です。
日産のメンテナンスは受けているらしく、パッドやタイヤは交換したばかり、と。
タイヤはBSのRE070、要は、純正のGT-R用のタイヤで、DUNLOPよりはグリップの悪い方です。

スペック
2007年式 777万円
3800cc V6 ツインターボ。公称480馬力, 60kgm。
1740kg, 全幅1895mm, 最小回転半径 5.7m。

エンジン性能


国産初の480馬力。あちこちで、「景色がゆがむ」と言われていましたがはたしていかがかな?
僕の経験では、ガヤルドLP560-4での全開加速では、ミッドシップ+4WDのトラクションの良さもあり、
景色やスピード・タコメーターをみるまもなく、どんどんと車速は伸び、「景色がゆがみ」ました。
但し、明らかにシャーシにエンジンが勝っているクルマですね。
吠えるエンジン音の演出もあって、「これは速い!」と思いました。

では、GT-Rは?まず、0-100kmをやると、1速・2速・3速とレブまで廻して全開にしていくと、
さすがに4WDということもありRE070のタイヤは空転する様子もなく、車速はどんどんと伸びていきます。
しかし、車速の伸びが思ったほどではないのはやはり1800kg近い車重が効いているのでしょう。
この感じは、現行M3と似ていますね。


エンジンはブースト0.8で頭打ち。3000回転あたりから、ブーストがかかり(それ以下はかったるい)、
一気に上までフラットトルクで廻ります。

ポルシェの様なトルクの谷がなく、エンジン音の演出もそれほど過剰ではなく、
「はやい!!」とか、「景色がゆがむ!!」という感じも全くありませんでした。
直進安定性も良いクルマなので、安心してべた踏みしてました。これは大きな事実で、
「誰でも全開にできる480馬力」なのです。どっかに飛んでいきそうなガヤルドとは大違い。

多くで誤解されていることですが、このクルマの売りはエンジンでは無いように思います。
このシャーシにはもう少しパワーがあっても十分いけるでしょう。
(後述するミッション、ブレーキがついていかないでしょうが)
非常にキャパシティの大きなクルマ作り。そこに、480馬力がつまれているだけに過ぎません。

ちなみに、低速域からの発進ではそれなりの性能をみせるものの、
高速巡航からの追い越しなど「もっと速くてもいいのでは?」という場面もありました。

トランスミッション


6速の2ペダルMT。右アップ、左ダウン、でコラムに固定されている(ハンドルと廻らない)ので、
タイトコーナーでぐるぐるやっているときに、「どっちだっけ?」とはならないのは美点。
PDKよりは圧倒的に操作がしやすいです。DSGのボタン形状とどちらがいいかは好みの問題でしょう。

そして、驚いたのが、僕がクルマを借りて、ニュートラルにいれてから、いきなり「ガラガラガラ・・」と
異音をかなでるミッション。この異音は、峠で振り回して温度があがるとともに増悪し、
しまいには、「このまま走り続けると壊れるな」と思わせる程度まで音が大きくなりました。シフトショックも相当なもの。

僕らの走行ペースが速かったといっても、所詮公道です。サーキットには持ち込んでおらず、
はたしてサーキットで走行券一回分、30分の走行をこのミッションで行えるかどうかは疑問です。

クラッチのつながりは市販車の中では「普通」で、決して早くはありません

排気量の小さいDSG(ゴルフなど)の方が早い場面も多いでしょう。

峠の走行を続けるにつれて、このシフトショックと異音はどんどん大きくなり続けました。
30分程度のクールダウンでも改善せず、2時間ほど冷却してやっと元に戻りました。
・・と思ったら、行きの高速より、帰りの高速の方が異音が酷くなっていたので、
「戻って」いないのかも知れません。

サーキットに行かなくても、公道の全開程度で、ミッションに不可逆的な変化が起きてしまうクルマ。
日産が、メンテナンスにシビアになる理由が分かる気がしました。
ちなみに、5万km落ちという面も大きいと思いますが、新車に乗った事のあるO君曰く、
「新車時でも同様」なので、GT-R固有の問題と思われます。

サスペンション
ボディ剛性は現在の市販車では十分高いレベル。「驚くほど」ではないが、
480馬力を乗せるには十分な性能と言えます。

言い遅れましたが、サスペンション、トラクションコントロール、4WDシステム、それぞれにRモードなるものがあります。
サスペンションは、ノーマル、Rモード、コンフォートの三つ。
色々試しましたが、公道では、実際に、街乗りでも峠でも高速でもノーマルが一番バランスが取れていました。
Rモードは峠の路面でははねるだけで良い所なしですね。サーキットの路面では良いのかも知れません。
そして、Rモードではリヤサスの挙動は大きく変化するものの、フロントはほとんど変化せず、
僕にはほとんど変化が感じられませんでした。

今回装着されていたのは純正タイヤのうちグリップが低いと言われているBS。
それでも、相当ハイグリップ指向のコンパウンドです。DUNLOPではイメージが少し違うかもしれません。

GT-Rというクルマ。ターンパイクのような高速コーナリングを上っていくときには結構調子が良いです。
しかし、特に下りでは、限界域の速度でのコーナーへの進入に恐怖感が出てきます。

ケイマンを例に挙げて説明します。
同じターンパイク、ケイマンでは上りはミッドシップの旋回性能を生かして安心してコーナーの出口から踏んでいけます。
一方、下りでも直線での十分なブレーキングの後、ブレーキをひきずりながら、荷重移動をして、
やはりそれなりの速度で曲がっていけます。そして、時に限界を超えても、笑いながら修正舵をきって、
電子制御デバイスの助けの元、走り去っていけます。ケイマンやボクスターでドリフトは容易です。

しかし、GT-Rでは違います。限界まではそれなりにサスペンションが良い仕事をしてくれるのですが、
ある一定速度から「限界を超えたら制御不能になる」と本能にクルマが訴えてきます。(おそらく正解)
実際にタイヤが鳴くスピードになってもテールが出ることは決して無く、むしろフロントが逃げて
弱アンダーになります。そういう意味では、「限界を楽しむクルマ」ではなく、「限界の中で480馬力を遊ぶ」
というセッティングのようです。BMWにありがちないきなり破綻するクルマよりはよっぽど好印象ですね。

そして、この限界速度は決して、ケイマンより速くありません。
ケイマンの方が車重が300kg軽く、ミッドシップなので、GT-Rが勝てる要素は一つもないのです。
では、どうやって曲がっているか。これはひとえにタイヤに依存しています。

重い重量と、ハイグリップなコンパウンドの純正タイヤ。これによってコーナリングしているのがGT-Rです。
スリックを履くキャパシティは無いでしょうし、純正タイヤがベストバランスなのは間違いありません。

GT-Rでドリフトなんて考えられません。しかし、ハンドリングそのものは悪くありません。
サスペンションの挙動もタイヤをしっかり使い切る方向で悪く無いと思いました。

そして、このタイヤが終了したときがGT-Rの終わり。実際にタイヤがたれてくると、コーナリングスピードは
一気に低下します。ムリをすればアンダーで峠から墜落していたでしょう。

ブレーキ

でっかいブレンボが付いています。ブレーキの効きは「それなり」です。
コントロール性は決して高くありませんが(ポルシェには負けている)、踏めば効きます。
但し、車の重さからすれば、まだまだ足りない印象ですし、耐久性が致命的にかけています。


かり出した車両のローターはクラックだらけでしたが、僕らが峠を数時間走行すると、
ローターはさらに終わった状態になっていました。
このローターに数十万円の工賃・部品代を請求するのであれば、とてもやってられません。
ポルシェでは同様の運転でもパッドが少し減る程度ですね。

エクステリア

1895mmというボリュームと、GT-Rという歴史を考えると、よくまとめられていると思います。


しかし、フェンダーのエンブレムの細工など、プラスチック全開で、もはやプラモデルのレベル。
僕の年齢では決して乗れない車だな、というのが正直な印象です。


リア廻りも悪く無いですね。


ミラーでの見切りも良く、車幅の割に細かい路地も入っていけます。
ただし、最大回転半径がそれなりなので、Uターンはハンドルも重いので大変です。


ちなみにボンネットのダンパーがついていなくて、つっかえ棒だったのは幻滅です。
エンジンルームの見た目ももう少しよくした方がいいですね。

インテリア


ここはコストカットが目立つ部分が多々あります。


オーディオ廻りのプラスチックパネルは最低です。


しかし、美点はナビ。高性能で、画面も外車の最低な純正ナビとは比較にならず、十分使えます。
ただ、運転中に目的地設定できない・TVがみられない、のは惜しいですね。
ハンドルのチルトのレバーが硬く操作がしづらかったのですが、
メーターごとチルトするので、メーターが見やすいという利点がありました。


またインフォメーションディスプレイは非常に見やすく、追加メーターは全く不要です。良くできています。


ユーティリティ
剛性確保のためにリヤのトランクの開口部は相当狭く、荷物を入れるのは大変です。
なおかつ全開走行では、リヤのトランクは相当熱くなります(911・987のポルシェのトランクといい勝負)。
野菜を買ったら、リヤシートに奥のがいいでしょう。
全開走行で、助手席足下も相当熱くなりますし、遮熱にはもう少し気を配ってもいいかも知れません。

というのが各部分のインプレッションです。
おそらく、マイチェンでなおしている部分もあるでしょう。
この車を軽く作れば、値段は上がりますが、「タイヤに依存する」以上の新たな面が見えてきます。
車の重さは絶対にごまかせません。

GT-Rは1000万円にして軽量素材を取り入れて、-100kgにする事で、サーキットにも持ち込めるようになる気がします。
逆に言うと、例えケイマンと同じ価格帯でも、この重い車を買う気にはなれません。
また、遮熱の悪さ、ミッションからの異音、ローターの消耗のはやさ、など、致命的な部分もありました。
ここが解決されない限り、初期ロットのGT-Rは買うべきでないでしょう。

良いところもあります。「リセールの良さ!」。
というのは冗談で(実際にリセールは良いですが)、480馬力が非常に安全であることです。
誰でもふめる480馬力なんて、今ままでありませんでした。
そして、純正メンテナンスを前提に、サーキット走行後の性能を保障している点です。
これはポルシェについで、二つめのメーカーですね。

また、意外なことに、「前走する車がどんどん道を譲ってくれる」というのも驚きました。
僕の経験では、ポルシェといい勝負です。
シビックtypeRあたりだと、誰も譲ってくれずイライラする場面も多いのですが、
GT-Rに対する一般の認知度は非常に高いようです。

走行性能に関しては、結局、「車は重さ」ですね。typeRは1270kg、ケイマンは1330kg。
どちらも同じコースで、GT-Rを上回る安定性をもって旋回し、耐久性も高かった訳ですから。
ただ、下りのタイトコーナーというGT-Rに最も苦手な場面だったことは確かです。
富士の本コースのような、全開率が高く、加速・トラクション性能がタイムに直結するところでは、
2-3周のタイムは速いかも知れません。しかし、重量ゆえに耐久性がなく、アタック10分後には
ピットイン!、になるのは容易に予想できますが。

O君はGT-Rに思い入れがあったようですが、僕は全くありません。
僕からしてみると、「こんなに重い車でなんでスポーツカーにするの?」というのが正直な印象です。
現行のM3のようにサルーンにしてしまえばいいのに、どうしてポルシェターボとタイムを勝負させるのでしょうか?

ポルシェはGT-Rの耐久性については、よく知っているので、ニュルのタイムを全く気にしないのでしょう。
一本のタイムではなく、耐久レースで勝てるような車をポルシェは明らかに市販車でも目指していますので。

というわけで、僕にとって、GT-Rは「トラクションが良くてよくまがる、重量級のサルーン」でした。
オーナーの方、申し訳ありません。素人の一意見ですが、一日、相当に乗り込んだ結果ですので、
こういう意見を述べる事をお許し下さい。

ちなみに、ここまでのペースで走りつづける人は、GT-Rオーナーの5%以下である、というのも真実でしょう。
そう考えると、このGT-Rも「あり」なのかも知れません。

 


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