emergent call record
事件記録簿 / Jichi Med Univ(JAPAN)
多重衝突inJapan
現場 国道50号
時間 2020年 8:00
今度は日本の多重衝突のケース。通勤時に、国道50号で事故直後で破片の散乱した現場に遭遇。
交差点脇のあいた駐車場に車を止めて現場に向かう。
見晴らしのいい直線道路、信号待ちをしていた自動車の最後尾に大型トラックが追突した。
車両4台、人8名が巻き込まれた事故だった。
110番通報はされてるが、事故処理はされていない。すでに現地では渋滞がはじまっていた。
手持ちの発煙筒、事故車両からも発煙筒をとりだして、まわりの交通との距離をとれるようにする。
交差点は、特に混乱が大きくなりがち。無理する車両には「近づくな」というボディランゲージで対応。
車両1:透析クリニック送迎車両
車両損傷の具合は先頭車両が激しい。先頭車両は軽自動車で、透析クリニックの送迎車両。
医療事務1名と、透析患者2名が乗車してる。
一人はもともと大腿骨折してる高齢者。事情を話して体を確認すると、事故に伴う新たな
外傷はないようだった。もう一名も、むち打ち程度。
医療事務の方と相談し、透析クリニックの院長に事情をつたえてもらう。
放っておくと救急搬送されてしまうが、維持透析のスケジュールがずれるほうが問題が発生しそうだ。
その旨院長にも相談し、結局、近くのクリニックなので現場にきてもらい引継ぎをした。
やはり、「簡単な骨レントゲンはクリニックでとれるし、まずはクリニックで透析します。」となり、
救急車にはのらずに透析病院からきた別の車両にのりかえていった。
到着した警察にも、こういった事情を説明して理解してもらった。
こういう時に、何も考えずに、救急車を頼るのは問題解決にならない。
それぞれの、抱える問題に現実的な対処をするしかない。
現場の警察官や救急隊は自己判断をしてはいけないことになっているため、
当事者や周りの人で、現実的対処を組み立てていくことになる。
車両2:外国人
2台目の車両は外国人。日本語は片言で理解度は高くない。
英語はわずかにしゃべれるが、スペイン語が母国語のようだ。
軽自動車は中等度の損傷だが、おおきなけがはない。
まず、不法滞在などの問題がないかが気になった。
実際には、「通報されたくない」「現場から逃げたい」と思ってる
かもしれないからだ。警察がくるけど大丈夫か、とか、
パスポートなり外国人登録証なりもってるか、ときく。
日本のやりかたでは救急車に乗る人が多い、という説明をしたあと、
「警察や救急にまかせていい」という彼女たちの意思を確認した。
自動車の車検証が必要になるとか、保険の確認が必要ですよ、みたいな
説明をしてあげたが、どの程度理解できていたのか。
救急隊到着後、救急搬送されていった
車両3:中年男女
3台目は、中年男女+軽自動車。
受傷はほとんどないが、男性が首を押さえていて辛そう。
とはいっても、本当に痛いのか、保険がらみで何か意図があるのか、
見極めることはできない。(今回は本当に痛そうだった)。
というのも、それぞれの人には、それぞれの権利、それぞれの理屈がある。
彼らはとにかく、「巻き込まれたこと」に怒りをあらわにしてる。
彼らも救急搬送されていった。
今回は、優先度の差はあまりなかったが、救急隊の人にすぐに、
「もっともすぐにケアと搬送が必要な患者が誰か」を指示だしたほうがいい。
こういうのは、被害者は判断がつかない。
車両4:加害車両
加害車両は大型トラック。女性ドライバーが運転していた。
「ぼーっとしていて信号も停止車両も気づかなかった」と。
それでも、ブレーキは踏んでいたのでこの程度の事故で済んだようだ。
大型トラックは、一般的な損害保険に入っていないことがおおい。
あくまでも、事業者の対応になる事が多く、今回も事業者の社長さんが
すぐに現場にきていた。
「人材不足で頼まれてドライバーをやったが運転は得意ではなかった。
こんな迷惑をかけてしまって、どうあやまったらいいかわからない」というドライバー。
とはいえ、社長さんも、配慮した言葉をドライバーにかけるわけでもなく、
ひたすら、「面倒なことになった」という表情だった。
実際、こういうのは、日本の物流が抱える問題だし、社会の矛盾だと思う。
事故処理の最後は、この女性ドライバーの話を聞いていた。
処理の現場では、露骨に加害者には冷たい言葉が浴びせられる。
一人くらい、僕みたいな第三者がいてもいいのかな、と思った。
たくさんの人の事情
というわけで、多重衝突では、たくさんの車両・被害者が関係する。
それぞれの人に、それぞれの事情がある。
どこに医療搬送するか、誰に連絡すべきなのか、。。